三月は深き紅のダートを Dirt27 KLX250SRの本格改造 その2

編集スタッフのエクストリームチャレンジ

三月は深き紅のダートを Dirt27 KLX250SRの本格改造 その2

掲載日:2014年02月26日 ※本記事は他媒体で連載していたもの(現在は抹消)を復刻したものです。

取材協力/ダートフリーク、ダンロップ、野口装美、MCインターナショナル

 

ハンドメイドスペシャルシート
野口装美マジックに酔いしれる

 

今回のカワサキ KLX250SR改造、何が重要だったかというと、大きくはオンタイム制エンデューロでぶち当たった、【クラッチのキレ】【足着きの悪さ】の2つです。クラッチについては、前回の油圧クラッチキット(MAGRA製)で解決しましたので、次は足着きの悪さです。リアサスペンションの特性をあまり大きく変えたくなかったので、ローダウンキットは使えず、そうするとまずはシートのアンコ抜き、ということになります。

 

そこで登場するのが、野口装美という会社です。古くから特にラリーレイド系で評判の高いシート屋さんで、パリダカールラリーの頃から多くのライダーが指名・愛用しています。近年では海外の選手や、ダカールラリーに復帰参戦しているHRC(メーカーファクトリー)のマシンでも採用される程、その名声は高いです。

 

ぼくは、雑誌ガルルでその存在を昔知り、その後、マウンテンバイクのダウンヒルが流行った時期に、野口装美が自転車用サドルを手掛けレース会場に出店していたこともあり、「シートをカスタムするなら野口装美しかないでしょ!」と考えていました。そういうことで、今回のローダウン化に際し、代表の野口 英一さまの協力をいただきました。

 

まず、ブーツを履かずに跨った状態の写真を野口装美に送り(野口装美は岐阜県にある会社で、さすがに直接は行けなかったので)、自分がどれだけ足が届かないのかをアピールしました。そこで返ってきた答えが以下のようなものでした。

 

「写真拝見しました。
この頃のトレールバイクはシート傾斜がきついんです。
なのでアンコ抜きをすると更に角度がきつくなり、座る位置が前部で固定されてしまいます。
角度をきつくせずに抜く場合、段付という方法もありますが、これだと段のせいで前後方向の移動がしにくくなるのでレース向きではないですね。

シートの形状を見ながらまたご提案させていただきます。」(原文)

 

そう、KLX250SRは野口装美をもってしても、かなり困難なシート形状をしていたのです。「アンコ抜きなんて簡単にできるだろう〜♪」と考えていたので、Bigな誤算でした。しかしその後、現物を野口装美に送ること数日も経たないうちに、次の提案が届きました。

 

「シートが届きました。
やはり、レースに使うことを考えると、段付より傾斜はきつくなるけどフラットに削ったほうが良さそうですね。低い部分は少しは前後に動きやすいような傾斜にしてみます。

先ずは形状から作って、完成前に一度確認なさいますか?」(原文)

 

正直、シート加工に対する知識なんて皆無なので、ここは、野口装美に丸投げ。お任せすることにしました。なんといっても、先方はノウハウの量が半端ないですから。で、ここでGoサインを出したらなんと、かなりびっくりするスピードで、仕上がったシートが送られてきました(2週間程度。通常も2〜3週間ぐらいでできあがる)。腕も確かな筈ですが、スピードもかなりもので、ビビリました。それではここからは、代表の英一さんの言葉も引用しながら、どんなスペシャルシートができたか見て行きましょう。

 

1番おもてに張られた素材はビニールレザーで、座面には滑り止め効果の高いグリッパー素材を使用しています。「レース時の加速減速のポジションの安定を図っています」ということです。サイドはプレーンなレザーとし、「サイドに滑り止めを使うかどうかは好みにもよりますが、足着き性も考えて今回は滑りやすいカバー地になっています」。

 

作成において心掛けたことや難しかったことを尋ねたところ、
「今回のバイクの場合、前下がりの角度がノーマル時でも強いため、単純にシート高を下げるだけではお尻が一番低いところで固定されてしまうため、一番低い部分を若干前後に広く取りました。
ウレタンを削って下げれば下げただけ足着きはよくなると思われがちですが、ある所まで下げると目線は下がりますが、シートベースの幅が内股を広げて足が着きにくくなってしまいます。
なので、その辺りの問題を考慮した上で25mm下げて両サイドをシェイプして細めにし、足を出しやすくしました。
足着きも重要な課題でしたが、足着きを良くしつつ乗り心地も損ねないように、という高さが今回の高さとなっています」とのことです。

 

具体的な作業内容について伺ったところ、まず、ノーマルのウレタンはシートベースに近い部分を残し削り取ってしまいます。その後、衝撃吸収材であるT-NETと野口装美オリジナルのウレタンを積層します。そして最後に、縫い目から入る水からウレタンを守るために防水コーティング(EVA)を施した構成となります。アンコ抜きをすると多くが座り心地が悪くなりますが、野口装美では独自の素材を使うことで、その問題を回避しているのです。

 

後端には熱で転写したシートで『NOGUCHI』の文字が貼られ、所有欲も大いに満たしてくれます。転写タイプなので、自身の名前やチームロゴなども入れることも可能になっています。

 

この野口装美スペシャルシート、実際に跨って街乗りをするとまず、目線が僅かに下がったことが体感としてありました。シート高的には25mmのダウンですが、両サイドのシェイプもあって、かなり目線が下がった印象です。足着き性についてはこの数値なのでさすがに大きく改善、とはいかなかったですが、体重移動のし易さと足の出し易さで、機敏に動けるようになりました。2時間近く着座の状態で走ってもみましたが、お尻が痛みを覚えることは皆無でした。モトクロスコースはまだ走っていないので、その感想はまた後日で。

 

いやーしかし、このシートは極上品ですよ。すこし乗っただけですぐに解りました。びっくりです。

 

 

今回の作業内容についての、参考価格。

■作業内容
1.衝撃吸収材T-NET挿入
2.アンコ抜き
3.張替ビニールレザー

上記3点で57,750円(税込、送料無料)。

張替の際、ツートンカラーまで価格に変更はありません。例えば座面と際の色分けや座面にグリップ素材を使用しサイドにプレーンなビニールレザーを使用した場合。
エクセーヌやアルカンターラでも同じですが、それぞれ素材の価格が変わってきます。
衝撃吸収材を挿入する場合、その工程上アンコ盛(20mm程度)とアンコ抜きを同時に行なっても価格に変更はありません。
なので、今回の改造もアンコ抜きをしない場合でも¥57,750のままとなります。
ロゴ入れはタグやプリントなど無料です。ただし当社ロゴに限ります。
お客様のご希望ロゴも可能ですが、別途料金がかかります。

車種や改造内容で価格は変動しますので参考価格としてください。(野口 英一)

 

 

画質悪くて申し訳ないが、KLX250SRのノーマルシート。メーカーでも一生懸命足着き付き性を考えたのだろう、中央部はかなり抉られてはいる。ただし、ガソリンタンクへの傾斜が非常にきつい。
画質悪くて申し訳ないが、KLX250SRのノーマルシート。メーカーでも一生懸命足着き付き性を考えたのだろう、中央部はかなり抉られてはいる。ただし、ガソリンタンクへの傾斜が非常にきつい。
各関節がフレキシブルな普段着での、乗車状態。ハイトの高いエンデューロタイヤを履いている、というのもあり、片足のつま先を着けるのが精一杯。車重が軽いのでなんとかなっているが、厳しいことに変わりはない。
各関節がフレキシブルな普段着での、乗車状態。ハイトの高いエンデューロタイヤを履いている、というのもあり、片足のつま先を着けるのが精一杯。車重が軽いのでなんとかなっているが、厳しいことに変わりはない。
膝に装具を着け、モトクロスブーツを履いて関節がガッチガチに固まった状態での足着き性。もうかなりヤバイことがお解りだろう。もう、レースどころの騒ぎではない。なんとか、シート高を落としたい。
膝に装具を着け、モトクロスブーツを履いて関節がガッチガチに固まった状態での足着き性。もうかなりヤバイことがお解りだろう。もう、レースどころの騒ぎではない。なんとか、シート高を落としたい。
1番目の写真を野口装美に送って、まず返ってきた写真。ローダウン案その1。レーサーのようにシートがフラットならかなり削りようがあるのだが、KLX250SRはノーマルでもかなり傾斜のついた形状なので、ほとんど削ることできないという。
1番目の写真を野口装美に送って、まず返ってきた写真。ローダウン案その1。レーサーのようにシートがフラットならかなり削りようがあるのだが、KLX250SRはノーマルでもかなり傾斜のついた形状なので、ほとんど削ることできないという。
中央を削り、段付きにしたローダウン案その2。足着き性の向上は見込めるが、段が付くことでシート上での重心移動が阻害される恐れがあり、野口装美としてはあまりお薦めしたくないという。スーパークロスとかならありだろうが。
中央を削り、段付きにしたローダウン案その2。足着き性の向上は見込めるが、段が付くことでシート上での重心移動が阻害される恐れがあり、野口装美としてはあまりお薦めしたくないという。スーパークロスとかならありだろうが。
結果的にローダウン案その1を有力候補として、シート単体を野口装美に送ること2週間、あっという間に綺麗でシンプルな箱で改造されたシートが届いた。余ったダンボール箱などで送られてこなく、この時点で既に高級感が何故かある。
結果的にローダウン案その1を有力候補として、シート単体を野口装美に送ること2週間、あっという間に綺麗でシンプルな箱で改造されたシートが届いた。余ったダンボール箱などで送られてこなく、この時点で既に高級感が何故かある。
早速箱を開梱し、カスタムされたスペシャルシートとご対面。シートカラーは元々の紫から、AMAカワサキファクトリーと同じブラックに変更してもらった。傾斜がきついので、中央部を僅かに削り、またシェイプして足が着きやすいように加工されている。
早速箱を開梱し、カスタムされたスペシャルシートとご対面。シートカラーは元々の紫から、AMAカワサキファクトリーと同じブラックに変更してもらった。傾斜がきついので、中央部を僅かに削り、またシェイプして足が着きやすいように加工されている。
カスタムされた野口シートの大きな特徴は、1番下のレイヤーに入れられる衝撃吸収材のT-NET。温度に依存しない平均的な振動の吸収性と、座圧の分散効果があるイチオシの部材という。この分の標準ウレタンは、削られている。
カスタムされた野口シートの大きな特徴は、1番下のレイヤーに入れられる衝撃吸収材のT-NET。温度に依存しない平均的な振動の吸収性と、座圧の分散効果があるイチオシの部材という。この分の標準ウレタンは、削られている。
T-NETの上に配されるウレタンも、野口装美オリジナル。通称「アンコ」と呼ばれる部分で、モールドされたウレタンを各人に合わせた形に丁寧に削っていく(写真は参考品)。最後は、この上にEVAという防水コーティングシートが張られる。
T-NETの上に配されるウレタンも、野口装美オリジナル。通称「アンコ」と呼ばれる部分で、モールドされたウレタンを各人に合わせた形に丁寧に削っていく(写真は参考品)。最後は、この上にEVAという防水コーティングシートが張られる。
僅か25mmだが、ローダウンされた野口装美謹製カスタムシート。足着きの大きな改善、とまではいかなかったが、幅もシェイプされ表皮のビニールレザーも物が良いため、シート上での体重移動が格段に良くなった。また、クッション性が秀逸。
僅か25mmだが、ローダウンされた野口装美謹製カスタムシート。足着きの大きな改善、とまではいかなかったが、幅もシェイプされ表皮のビニールレザーも物が良いため、シート上での体重移動が格段に良くなった。また、クッション性が秀逸。

 

 

<続く>

 

shop

有限会社野口装美

モータサイクルのカスタムシートをメインに手がけるスペシャルショップ。特に長距離を走るラリーレイドなどで定評があり、最近では特別にクルマ用のシートもトライしている。海外からも注目される、日本の匠。

住所/〒501-3941 岐阜県関市小屋名921-2
電話/0575-28-2057
営業時間/10時〜17時
定休日/土日・祝日
URL/http://a-seat.jp
E-mail/bike@a-seat.jp

 

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