■メリダ/MERIDA BIG.TRAIL 800(2017) 26万8,920円 38cm MTB試乗インプレッション

BIG.TRAIL 800は、現在のマウンテンバイクの主力となったタイア径27.5″(650b)に追加的要素が加わった、『650b+』とさらに新しい規格(ジャンル)のBIKEになります。

■メリダ/MERIDA BIG.TRAIL 800(2017) 26万8,920円 38cm MTB試乗インプレッション

 

MERIDA BIG.TRAIL 800(2017) 26万8,920円

 

掲載日:2017年04月27日  取材・写真・文/やかん

 

下りBIKEの新機軸。流行りのエンデューロにも好適かと

 


BIG.TRAIL 800は、現在のマウンテンバイクの主力となったタイア径27.5″(650b)に追加的要素が加わった、『650b+』とさらに新しい規格(ジャンル)のBIKEになります。その特徴は、タイア径が従来の26”から大径化しただけでなく、横方向にも拡張がされ、ファットバイクとまでは行かなくとも、トレッド幅のかなり広いタイアを装備するのが特徴になります。


当然、これはより高速スピードでもグリップを失わず、また難セクションでの踏破を目的としたものになります。BIG.TRAIL 800は、この新規格のホイールセットに合わせて、67.5”のヘッドアングル、427.5mmというショートチェーンステー。代わりに、トップチューブはロングとなりMサイズで616mmと、独特のジオメトリーとなります。ステムは、これも今はやりの、35mmというショートタイプを装備します。


本機の狙うところは、ハードテイルでありながら道を選ばず、そして相当にアグレッシブな走行が楽しめる下りにかなり特化したシチュエーションに思えます。フロントフォークは、ラインの選択肢が広がるという名目で130mmサスペンションを組み合わせ、若干の登りも考慮してのドロッパーシートポストも装備します。


ハードテイルBIKEでオールラウンダーを目指した1台と見てよさそうなのですが、さて実際はどうなのでしょう。


毎年、メディアミーティングで提供されるゆるい傾斜が付く丘陵地帯のTrailで走った感想は、値段はかなり高いBIKEですが想像した以上に良かった、ということです。独特のフレームジオメトリーは、やはり下りでのアグレッシブな走行を容易なものとし、ドロッパーシートポストもストローク値が身体に合っていれば、下りで股下周りにまったく障害がなくなり、それがもの凄く楽に感じ、気分良くライントレースに集中できます。


27.5″+(650b+)のタイアは、エアボリュウムもあるので、かなりエア圧を下げても走ることができ、空気のサスペンションといった感じは、ハードテイルである難しさを軽減してもくれます。


ただし、登りが長く続くセクションは、正直ムリです。BIKE全体やタイアの抵抗感が強く、重すぎます。また、フロントセンターとリアステーの特異なジオメトリーから、登りでしっかり前荷重ができないと(サドルに腰掛けたまま)、簡単にフロントが捲れ上がります。


他、サスペンションは名門のロックショックスですが、低速だと動きに渋さがあり固く感じます。下りでスピードが乗ってくるとbestな動きを示すので、ある程度のスピードで走り抜けられるスキルは養っておいたほうがよさそうです。ロックアウト機構が備わっていれば、さらによかったのですが。


ギヤ周りは、信頼のシマノ製を1×11の流行り組み合わせとしているので、左手が煩わしさから開放され、結果、ライントレースなどにかなり集中できます。近年盛り上がりを見せている『エンデューロレース』での使用も“あり”な1台と感じました。


1度、富士見パノラマリゾート(長野)のような、長い下りセクションが続くコースで走ってみたいものです。そこで、この価格に納得する見合った性能を感じられるのかもしれません。人によっては、Aコース踏破も余裕かとも思います。グリーンシーズンが楽しみになる1台ではありました。

 

※価格は税込み。掲載時点でのものです。

 

 

タイアに、27.5でありつつ“2.80”とかなりWIDEなものを履くのが『+』の特徴。当然、グリップ力の向上は目覚しい。
ワイドトレッドとなるが、フロントフォークは専用品となるので、排土性などで問題になることはない。
チューブ・バルブと比較すると解るが、リム幅も相当なもの。メーカーはメリダ製となる。
フロントフォークは、130mmのトラベル量を持つロックショックスのYARI。27.5”+仕様のもので、流行りのBOOST規格品にもなる。
ハブ軸が要で、15mm×100mm BOOST Torqueを採用。ロックショックス独自のクイック構造なので、特殊な工具などは不要。
サスペンションの右ロワーには、リバウンド調整機構を装備。ロックショックスのこのタイプは、毎度思うが解りやすくて良い。
右アッパーにはコンプレッション調整が備わる。乗り手やコース、シチュエーションに応じての細かな調整が可能。
YARIはエアタイプとなるので、左アッパーにポジティプエアの注入口が備わる。
BIG.TRAIL 800は、完全専用設計のフレームとなり、シートチューブは独特の湾曲構造となる。標準ではドロッパーシートポストが装備されるが、注意は必要だ。
トップチューブは極端なベント加工がされ、低いスタンドオーバーハイトを実現している。幾度も足を着くようなシーンも想定しているということだ。
ショートなチェーンステーに対し、トップチューブは長めの設計となる。押しの入った、異型のデザインも取り入れている。
大きめに寝かせたヘッドアングルは、下りでの操縦安定性を生み出すようになっている。ヘッドチューブはテーパードタイプ。
完成車でこれほど短いステムを装備するのは、かなり珍しいだろう。クランプ部も大径化され、確かなハンドリングを実現する。
個人的には、BIKEのキャラクターを考えるとケージダボが1箇所だけなのは残念。リカバリーのための装備品は、かなり身体に背負う必要がある。
コンポーネンツに安心のシマノ製を奢っているのが、BIG.TRAIL 800のひとつのポイントであろう。流行りの1×11であるが、フロントにデバイスは装備する。
基本ユニットはSLXとなり、リアの11sギヤは最大歯だけ46Tという極端にワイドレシオな設定となる。ただし、BIKE自体としては、登りはそれなりにキツイ。
リア周りは、12×148mmのBOOST規格と現段階では最新のテクノロジーを採用。本機の位置付けが理解できる。
シマノ製コンポーネントの採用は、小さなラピッドファイアーのシフター形状ひとつ取っても、実に良く考えられていて、ストレスをまったく感じない。
ブレーキはDISCとなり、キャリパーはM447というシステムになる。ローター径は前後とも、Φ180mmと下りBIKEとしては標準なもの。
ブレーキレバー側もM447システムを使うが、シフターにDEORE XTを使っている点は注目の点。ストレスフリーであるとともに、不具合を回避する。
フロントにギヤを持たないのでハンドル左側はシンプルなものになる。代わりに、メリダ製ドロッパーシートポストのレバーが備わる。

 

 

※本記事の撮影はオリンパスの協力を得て、スタイラス1sで行っています。

 

 


ダート&モト編集部
サトウハルミチ Harumichi Sato
東京都生まれ千葉県育ちで、身長156cmのminiライダー。紙媒体の編集を長く経験した後、2012年4月から初めてWEBマガジンに携わる。戦車から旅客機まで無類の乗り物好きで、特に土の上を走る四輪・二輪に目がない。競争事も好きで、MTB/MXはレース経験あり。モーターサイクル以外にフィルムカメラ、オーディオ、自転車、クルマ、紙の読書(恩田 陸先生の大ファン)、ガンダムが大好きで、住まいはモノで溢れている。特技は引き落としの滞納。本コラムのタイトルは、敬愛する恩田先生の作品からいただきました(三月は深き紅の淵を)。

 

 

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