【ハッピーマウンテンバイクライフ】#2 ESIグリップを丸石号に導入する。

掲載日/2019年02月23日  写真・文/やかん
取材協力/グルーヴィインターナショナル

 

1999年創業のメイド・イン・アメリカ

 もう何十年も酷使している丸石号ですが、日常の足として使ってもいるのでグリップが限界に達していました。きちんとしたODIの物なのですが、もういつ交換したのかまったく思い出せない程です。

古いODIのグリップ。傷みも出ていて、ややベトつく。
左はそれほどシフターを動かさないためグリップを握る力が強いのか、変形が酷い。

 そんなこともあり、いよいよグリップを換えようかと考えたのですが、ひとつだけ困ったことがありました。それは、丸石号に限らずなのですがぼくはバーエンド愛用派の為、今の主流であるロックオンタイプのグリップが使えません。あれはエンドに固定具が付きますからね。

 そうすると、昨今、実力がありながらエンドが抜けているグリップ、というのが見当たらないのです。適当な物なら幾らでもあると思いますが。そんな中、見付けたのが親交もある代理店(グルーヴィインターナショナル)が扱っている< ESI grips >というブランドのグリップでした。

 特徴は、ゴム質ではなくシリコン系の素材を使っていることです。このタイプはストイック系BIKEに標準で付いていることが多く、例えばメリダの試乗会では馴染み深い物でした。あれはメーカー公表されていませんが。

 そもそも調べてみると、このESI(イーエスアイ)グリップというブランドのシリコングリップは、なんとクロスカントリーレーサー御用達であることが解りました。それというのも、トレックファクトリーレーシングのレディースライダーであるエミリー・バッティ嬢が愛用をしており、彼女はカナダのオリンピック代表として戦った実績もあります(2012年ロンドン)。

2018年ワールドカップ、ラ・ブレス(フランス)でのエミリー・バッティ選手。銀メダルを獲得したレースで、この時もESIグリップを使っている(FITシリーズ)。
最近のエミリー・バッティ選手のコクピット周り。これはテーパー形状が付いたモデル。

 UCIの2018年ランキングは6位ですが、これまでに幾度もの優勝経験があります。そんな彼女の走りを支えている(であろう)ESIグリップは、実力は間違いなしの筈です。なにせ、昨今のクロスカントリーはコースレイアウトが激化して、サドルに腰掛けている時間の短さを考えるとBIKEとの接点はハンドルとペダルだけ、と言うこともできるからです。

 レース時間が短縮傾向とはいえ、グリップが悪ければ中盤から後半に掛けての身体パフォーマンスは発揮できないと思います。疲労軽減、コントロール含め、そこに必要とされる能力は多いでしょう。シリコン系グリップがいくつかのリアルレース完成車に標準採用されているのも、納得がいくかと。

 面白い動画もあります。トレックバイクのプロモーションなのですが、なんとESIグリップは素手でも良いみたいです。レース中、グローブしてないラウンドもあります。


※歯車マークの字幕設定から日本語を選択できます。

レッドブルのプロモーション画像より。ご覧のように、素手。

 という訳で、丸石号で最近はレースに出ることはないのですが、フラットダートを走るぐらいはよくあるので、このESIグリップをチョイスしてみることにしました。

 

勝手が違うシリコン素材に苦戦する

 現状のESIグリップは、種類が太さと形状で6つから選べるようになっています。ぼくは細身が好みなので、ベーシックなレーサーズ エッジ(50グラム)にしました。色はグリーン。オフロードバイクがカワサキ党というのが一番の理由(?)ですか。

 手元に届いたのがこちら。

Racer’s Edge Grip
素材/100% シリコン
サイズ/Φ30mm
質量/50g(ペア)
カラー/Black, Red, Blue, White, Green, Orange, Yellow, Gray, Aqua(New), Pink(New), Purple(Limited)
価格/Pink以外 2,050円(税抜)、Pink 2,200円(税抜)
取扱/グルーヴィインターナショナル TEL.025-521-5570

 エンドキャップが嬉しいです。

 では、早速作業に入ります。必要な物は特にないと思いがちですが、このようなシリコン系グリップの場合、ジェル状のアルコール液があると挿入が便利ということです。個人レベルだとメジャーなのが溶剤系ですが、これは絶対禁止。シリコン相手だと素材が溶けてしまうそうです。ゴム系とはここが大きく違うので、注意してください。

グリップの挿入で昔からメジャーなのが溶剤を使って滑りをスムーズにするものだが、ESIグリップに代表されるシリコン系は駄目。素材を傷めてしまう。今回は代理店推奨のジェル状アルコール液を用意した。ただのアルコール液だと揮発が速いので、ジェル状がポイント。

 まず、バーエンドを元の位置に戻せるよう、縁にマークを入れておきます。これを忘れてしまうと、長年慣れた角度を失ってしまいますからね。それが済んだらバーエンドを外し、今回はODIグリップは廃棄してしまうのでカッターナイフで切ってさっさと剥がしてしまいました。一度がっちり嵌ってしまったグリップを抜くのは至難の業なので、助かりました。

バーエンドの角度が解らなくならないように、ペンでマーク。

 そして念の為、ハンドルバー側に両面テープをすこし貼りました。これは、梨地加工されたバーだと時々、シリコンとの間に空気層が残ってしまい、グリップが回ってしまうことがあるからです。丸石号に付いていたバーは一般的な物でしたが、まあ一応。

アルコールの他、両面テープを用意した。
バー全面に貼るのはどうかと思ったので、縦に2箇所。

 ちなみに、このことから解るようにESIグリップはスポンジのような感触であり微細な穴はありますが、連泡ではありません。単泡です。水、泥は浸透しません。それだとレースでは役に立ちませんからね。

 さて、ところが今回の作業は、この両面テープがたいへん悪さをしました。というのがESIグリップは一応Φ22.2mmバー用となっていますが、内径がかなり狭いです。ジャストサイズだとクルクル回ってしまうので当然なのですが、エンドから押し込む時にすらなかなかバーの縁に引っ掛かりません。そんなに狭いのにそこにテープの厚みが加わってしまったことで、アルコール液をじゃばじゃば掛けても、グリップは一向に入っていきません。

 そうこうしているうちに、今度はアルコール液が乾いてきて、グリップとテープが貼り付こうとします。あまりにも入っていかなく困ってしまい、ゴム系でもよくやるマイナスドライバーを押し入れ、空気層を作り出しながら入れてみます。ところがこれがイカンかったです。

 後半にいくに従い当然どんどんとキツくなっていくのですが、そこでドライバーをこじっていたら、尖った先端でグリップ内側に傷を入れてしまいました。シリコン素材の特性上、1本線を入れてしまうとそこから連鎖的にピーッと裂けてしまいます。無理強いしすぎてやってしまいました。大失敗です。

やった瞬間、本当に「アー」っとなった大失敗。先の尖った物は絶対にNG。

 ただ、反省でもう一方は両面テープを貼らずにトライしましたが、こちらもどうにもキツイ。アルコール液はふんだんに塗っているのですが、とにかく入っていきません。最終的には、BIKEを横にして上から押し込むようにしたのですが、それでも爪が剥がれそうなほど動きません。

右側はテープを剥がしてトライしたが、どうにも入らずBIKEを倒し上から押し込んだほど。

 古いハンドルバーなので錆でも浮いてそれが抵抗になっているのか、とも考えましたがそんなことはありません。何故なのでしょう? 後日、取材用の協力品を壊してしまった謝罪兼ね、代理店に電話をしました。

古いBIKEだが、別に錆が浮いて抵抗があるとかではない。

 しかし、国内で取り扱い始めてかなり経つがそういった話は聞いたことがない、とのことです。せいぜい先の、『梨地バーには両面テープ対策』ぐらいのようです。一瞬、丸石号に付いているバーが太いのかとも考えましたが、ノギスで測るとむしろ19mmと、20mmにも満たないです。入る筈なのですが……。その電話で本国直伝の入れ方も教わりましたが、文字ではややこしいので参考動画を。

 要は、エンド側に指を入れて栓をして、グリップ内の空気が抜けていかないようにしながら一気に入れるのです。空気層を活用するのはゴム系とは共通のようです。もちろんこれもアルコール液は使っています。現在は交換品が手元にないので切れた側はタイラップで固定していますが、次回こそはミスなくやってみたいものです。

手元に当然、新しいグリップはないので暫定でタイラップ固定。申し訳ない気持ちでいっぱい。

 しばらくはこの状態で毎日乗ってみてはいますので、その感触や印象は別の機会にご報告したいと思います。ということで、相変わらず続きます。

━続く