掲載日/2020年11月5日 取材・写真・文/やかん
※お断り:
掲載時期を早める都合、随時、追加していくかたちにしています。
スペシャライズド・ジャパンが、多くのマウンテンバイクを試乗体験できるイベント、Trail Days(トレイル デイズ)2020 を開催。時期的に 2021 年モデルもいくつか用意されるということで、足を運んでみた。ショート形式で、印象を書きたいと思う。
試乗コースは、Ninja Trail。(神奈川県小田原市)
試乗モデルは、S サイズ。価格とパッケージングが、この日、試乗コースにもっともマッチしたモデル。
かつてのスペシャライズドの汎用BIKEといったらスタンプジャンパーという印象であったが、今はこのロックホッパーがその役割を担っているよう。ジオメトリーもハンドリング特性も、とにかく癖がなく、初めて走った湿ったトレイルを不安なく走れた。すべてのバランスが良い。
特に、次に紹介するチゼルが履くタイヤより、ロックホッパーが標準装備する Ground Control 29 x 2.3″ のほうがグリップ力があり、それでいて舗装路で重たい訳でもなかったのが印象的。(ブロックパターンは広めで、ノブも高い)
日本ではつい、『くだり性能』をアピールしがちだが、本来の「路面を選ばずどこでも自由に走れる」万能さがこの値段で手に入れられるのは、大きいと思う。
個人的に、色はこちらの『サテンシルバーダスト/ブラックホログラフ』が好み。
試乗モデルは、XS サイズ。勝てるアルミフレーム XC(クロスカントリー)BIKE を目指したそうで、D’Aluisio Smartweld Technology(ダルージオ・スマートウェルド製法)がその鍵という。
フロントフォークの沈み込みがやけに深く、ポジションに違和感あったのだが、初めの 1 本はエアの抜き過ぎ。圧を高めた 2 本めは、移動区間の舗装路でロックしたのを忘れ丸々走りきり、「サスペンションいらないかも」、という印象。本稿執筆時に、XS モデルは 80 mm トラベルであることが解る(現地では、100 mm と回答された)。個人的には、ここを改善したい。
それと、タイヤは、完全なレースターゲットなら標準の Fast Trak 29 x 2.3″ でもありかもしれないが、汎用性を取るなら Ground Control 29 x 2.3″ が良い。もしくは、Fast Trak をチューブレス仕様にして、低圧で攻めるか。Fast Trak 29 x 2.3″ はいわゆる、『ヤスリ目テイスト』のトレッドなので、湿った急斜面での登りは技量が要求される。
なお、グレード違いで下位モデルのチゼルが安いのだが(16万5,000円)、昔流行ったキャンディーレッド テイストに似た『グロスレッドティントブラッシュド/ホワイト』が魅力なので、色で選ぶとこちらになる。
それと、カーボンほどの軽さは感じなかった。
試乗モデルは、XS サイズ。イベント当日の試乗車受け取りの広場からトレイルまでのアプローチには、出てまもなく舗装はされているが急な登り坂があり、そこでいきなりリアの変速が不調。値段相応なのか、当日の整備が不良なのか。(後日の仕様確認で、スプロケット/カセットはやや気になる。)
トレイルに入ると、今度はブレーキの効きが前後とも弱い。これは、レース系車両に乗り続けての違和感なので、一般的には問題ないだろうが、オフロードに慣れてきたら槍玉に上がる。
タイヤは良い。細かな調整ができないフロントフォークも、本機で挑める速度域なら不満は感じない。
なにより、フレームが小さい、価格が安い。色も、個人的には可愛くて好き。
THE マウンテンバイクを「買ってみたい」、「乗ってみたい」、という入り口としては好適。
この値段から本格 BIKE がないと、やはり一般的にはキツイ。家族で揃えようとしたら、最低でも 2 台は必要になるのだから。(大まか 7 万円 × 2 で、14 万円が発生。)
老舗の良心が詰まった 1 台だと思う。
試乗サイズは、S2 サイズ(スペシャライズド独自表記)。生粋のダウンヒルレーサーで、当たり前だがトレイルまでのアプローチはほぼ地獄。リフトなどを使ったゲレンデダウンヒルが、完全なターゲット。
そのため、この日の試乗コースとの相性は微妙。特に、フロントタイヤが外側に流れる(滑る)感触が酷く、この日乗ったどの BIKE よりも恐怖を感じるし、スピードが出せない。
(補足として、フロント:Butcher BLCK DMND, 29 x 2.3″ 、リア:Butcher BLCK DMND, 27.5 x 2.3″ という、前後異径仕様。)
現地で出せるセッティングは大まか、スタッフのほうで行っているが、スピード域、ヘッドアングルの寝ぐあい、コースの斜度など、どれもが噛み合わなかった印象。
ただし、ちょうど同日、ポルトガルのロウザンで開催された『 2020 UCIマウンテンバイクワールドカップ』で、ファクトリーライダーのロイック・ブルーニ選手が優勝しているので、性能が良いことは確か(足回りのパッケージ違いはあるが、過去にも幾度も勝っている BIKE )。
完全なコンペマシンなので、しかるべき場所でしかるべきセッティングの上、練習も含め、走り込めば真価は発揮できる筈。
ちなみに、とんでもない値段に感じられるだろうが、ひとときの高騰期に比べると、これでも入手しやすくなった価格。
試乗モデルは、S2 サイズ(スペシャライズド独自表記)。本機は、煩雑化が進んだマウンテンバイクのカテゴリーに於いて、スペシャライズドでは『トレイル』の括りになる。
量産化初期のマウンテンバイクの多くは “ クロスカントリー ” カテゴリーに位置し、“ トレイル ” は現代ではそれに代わり、もっとも汎用性を持った BIKE と言える。
同社でも、「最高のトレイルバイクとは、軽く、タフで、登坂性能に優れていながら、激しい下りのセクションをしっかり操作して走れるバイク。」「トレイルで出くわすあらゆるセクションに挑めるバイクをお探しなら、ここで見つかります。」と語っている。
その中で、この『スタンプジャンパー』はスペシャライズドが古くから持つモデル名で、1981 年に登場した世界初の量産マウンテンバイクに冠されたモデル名でもある。今回の試乗イベントの中で、これと Stumpjumper EVO のみ “ 当日試乗受付 ” だけという特例で、試乗も一枠 30 分と他車の半分となっていて、「より多くのひとに乗ってもらいたい」という代理店の意気込みが覗えた。
ところが、午前と午後、都合 1 時間のライドでの印象は、極めて不良。特段不満は感じないのだが、際立っての特徴や惹かれるポイントが残らない。価格も考えると、『この BIKE でしか得られない何か』は、どこにも見付けられなかった。値段は倍するが、2019 年に乗った S-Works Enduro のほうが、圧倒的な魅力と所有欲を満たせて、「これは是非とも買いたい」、という頭一つ飛び抜けた性能を持っていた。
とんでもない値段であることは事実だが、それだって、『スタンプジャンパー』も “ S-Works ” になるとほぼ同じ値段がする。(S-Works Stumpjumper は、115万5,000円 / 税込)
当時との落差が、値段だけとは思えない。それと、実際に現地でもそういうシチュエーションに遭遇したが、この形状のフレーム( Stumpjumper )は『担ぎ』には圧倒的に不向きで、ここへの不満も大きい。
スタンプジャンパーとエンデューロ、それに各モデルに用意されるエヴォについて、追加の考察があるので、後日、お知らせしたい。
スタンプジャンパー エキスパートまで書き連ねてきて、ふと、各モデルの住み分けが解らなくなってきたのだ。実際に乗ると、新生スタンプジャンパーの立ち位置が不明だし、個人的にはエンデューロに軍配が上がってしまう。
さらに、それぞれには、エヴォという派生モデルも存在する。しかし、メーカーとしては特に今シーズン(2021年)は、『スタンプジャンパー』をプッシュしたい筈なのに、そこが読み解けない。
販売店や、もっと多くの乗車経験を持つユーザーなら解るのかもしれないが、ここは整理の意味で、一度、国内代理店に尋ねてみることにした(電話で)。その結果が、以下である。
大まかは、これを見てもらえれば解ると思う。一部、「?」になっているのは、この整理を済ませてから画像を添付してメールで認識の再確認をしたのだが、無反応。よって、この説明は、あくまで
『電話口でのやりとりに於いて聞けた、筆者が受け取った理解の範囲』
と捉えてもらいたい。メーカー 100% お墨付き情報ではない。(確実性を担保したかったのだが、延々、回答が返ってこないので)
もちろん、ここまでに書いた試乗の印象は、一個人のモノである。当然、これが万人に当て嵌まることはない。
仮に素性の感じ方は一緒であっても、介在する部品点数が多いので、各部の調整や変更で印象を変化させることはできる。
「メーカーの意図をこう感じたひともいるのか」、と捉えてもらえれば幸いである。
※後日
ダート&モト編集部
サトウハルミチ(やかん) Harumichi Sato
東京都生まれ千葉県育ちで、身長 156cm の mini ライダー。紙媒体の編集を長く経験した後、2012 年 4 月から初めて WEB マガジンに携わる。戦車から航空機まで無類の乗り物好きで、特に土の上を走る四輪・二輪に目がない。競争事も好きで、マウンテンバイク/モトクロスはレース経験あり。モーターサイクル/スポーツサイクル以外にフィルムカメラ、ホームオーディオ、クルマ、紙の読書(恩田 陸先生の大ファン)、プラモデルが大好きで、住まいはモノで溢れている。特技は、引き落としの滞納。マウンテンバイクは、オーバーサイズコラムの 26 インチばかりを 6 台所有( + BMX 1 台)。
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