■メリダ/MERIDA ONE SIXTY 5(2014) 289,000円 38cm MTB試乗インプレ

ONE-SIXTY 5は、近年ブームの兆しを見せる『MTBのエンデューロ』を視野に入れたモデルで、初登場は昨年の2012年です。

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※写真の試乗車は、リアショックユニットの取付け向きが誤りです

掲載日:2013年12月29日  取材・写真・文/やかん

懐深い160mmストロークと優れた登坂性能

 ONE-SIXTY 5は、近年ブームの兆しを見せる『MTBのエンデューロ』を視野に入れたモデルで、初登場は昨年の2012年です。MTBのエンデューロとは何か、というと下りでの圧倒的な性能を持ちながらも、登り返しややや上り斜面のアプローチといったダウンヒルバイクでは厳しいシチュエーションまでもフォローしよう、というスタイルものです。人力である以上、下り性能と上り性能は完全に相反するもので、片方を優先すれば片方は落とさざる得ないのが以前からのMTBの観念でした。それを今では、サスペンション構造の工夫やリアショックユニットの性能向上により、どちらも器用にこなしてしまうBIKEが増え、ONE-SIXTYもそのジャンルの1台という事です。

 さて、では実際に乗ってみてどうでしょうか。ONE-SIXTY 5は昨年(2013年モデル)にほぼ同じものが存在し、その時はタイムオーバーで跨る程度しか出来なかったモデルでもあります。ですので、少しだけ昨年の印象を持ちながらのインプレッションとなったのですが、その時の良い印象と今年(2013年/2014年モデル)ではやや趣が異なるようです。

 というのが、手で持った感じはフルサスペンションのBIKEとしては『軽い』部類に入ると思うのですが(スペック質量は15.3kg/43cmサイズ)、乗って走りだすとリアショックユニットの動きが良い為、リアタイア周りにやや引きずる印象があるのです。昨年はVPK(Virtual Pivot Kinematics)の妙に感心したのですが、ユニットのセッティングの違いでしょうか。接地感の良さが、ペダリングセクションや登りでは少し足にクルのです。

 ただこれは、一昔前の“ペダリングロス”と同義ではないので大きな心配はありません。余計な動きをする事はありませんし、特性を可変させられるリアショックユニットなので動きを制限する方向に持って行くと、とてもソリッドになってくれます。ペダリング重視の人はエア圧を少し高めにするなどの工夫で、好みのキャラクターに仕立てる事が可能でしょう。

 フルサスペンションなので前後の挙動に気が行きがちですが、他の部分に目を向けると、標準のハンドル幅はかなり広く、車体全体の持つキャラクターも若干大柄な印象を受けます。日本の狭い山野をイメージするからなのかもしれませんが、シングルトラックなどで扱うにはもう少し全体をコンパクトにまとめた方がよいかな、と個人的には思います。

 もっとも、世界的な視野で見ればエンデューロはやはりコースのかなりのセクションが下りになり、また場所によってはそれなりにハードな局面もあるので、正面からエンデューロを考えればONE-SIXTY 5の持つ方向性は間違ってはいないのでしょう。現に、この日に体験出来た僅かな下りではとても楽しいフィーリングを味わわせてくれました。ほぼ下り、でも少しだけ登りをフォローしたい、という使い方に好適なモデルです。前後160mmの懐の深さはダテじゃない、とすぐに感じ取れるでしょう。

フロントサスペンションは、SR Suntour Durolux RC2 160。インナーパイプ径35mmを持つ、シングルクラウンモデル。左右で内部構造が異なるセパレートファンクションタイプで、右レッグに調整機構を持つカートリッジ。左レッグにエア室を持つ構造となる。 アクスルは、20mmのQLOC(SRサンツアー独自構造)。工具不要でホイールが外せる仕様になる。ハブはシマノの下り系コンポーネンツ、ZEEが奢られる。 右レッグのトップ部で、コンプレッションのLOW/HIGHそれぞれのスピード域での調整が可能。リバウンド側はアンダー部のダイヤルで行う。ロックアウト機構は持たない。
リアショックユニットは、FOX Float CTD BV。エア式で、CTDという使い方に応じたショック特性可変システムを備える(青いレバー)。リバウンドも赤ダイヤルで調整可能。非常に良い動きをする。 フロントギアは2枚となり、MRPのチェーンデバイス+バッシュガードと組み合わされる。クランク、変速機は共にシマノのDeore。丁数は38-24Tとなり、登りも意識した設定となる。 走りには関係ないが、メリダの2014年モデルは広域をカバーする厚めのチェーンステーガードが標準で備わる。下側はシフトケーブルを一緒に覆う構造にもなり、見た目と保護性を兼ね備えるものになる。
リアディレイラーはシマノのDeore Shadow+となり、チェーン暴れを抑えるスタビライザーは持たないものの路面からのヒットを低減するよう考えられている。ダイナシスモデルとなり、スプロケットは11-36Tの10速。アクスルは工具不要の12mmスルータイプで、エンド幅が142mmワイド仕様。 ブレーキはシマノのM615となり、ローター径はフロントがφ203mm、リアがφ180mm。ネーミングが与えられたモデルではないが、前後とも必要充分な制動力とコントロール性を持つ。 メリダ独自のバーチャルピボット技術、VPK。リアサスペンションの動きだけでなく、変速性能、ブレーキング性能にまで寄与するもので、エンデューロのようにサスペンションが動きながら他の動作も必要になるシーンで効果を発揮する。
グリップは薄めでベーシックなパターンのロックオンタイプ。不便はないが人によっては好みで変えていい部分になるだろう。

 

■メリダ/MERIDA ONE SIXTY 1000(2013) 299,000円 38cm MTB試乗インプレ

ONE SIXTY は、前後160mmトラベル量を持つ、FREDDYと同じVPK(Virtual Pivot Kinematics)を採用したエンデューロ系BIKEです。

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※写真の試乗車は、リアショックユニットの取付け向きが誤りです

掲載日:2013年05月10日  取材・写真・文/やかん

マウンテンバイクの本質を堪能出来る逸品BIKE

  ONE SIXTY は、前後160mmトラベル量を持つ、FREDDYと同じVPK(Virtual Pivot Kinematics)を採用したエンデューロ系BIKEです。開発は2年前から始まっており(2010年)、2012年の段階ではゴーサインが出ず、2013年モデルでようやく顔見せとなった意外や熟成度の高いモデルになっています。事実、メリダのR&Dチームは、「納得するのにそれだけの歳月は必要であったし、結果、非常に満足するBIKEが出来上がった」と言っています。

 『1000』は、その自信を持って開発陣が送るシリーズ中でエントリーモデルになりますが、期待で胸が膨らみます。ところがプレスキャンプ当日、試乗が時間切れで、ブーステント前の広場をチョロッと乗っただけになってしまいました。時間がなく焦っていた事もあり、リアショックユニットが逆さまだった事は後で気が付いたほどです(写真を撮っていて)。その時点ではもう片付け作業が進んでいて、ここは目を瞑ってください。

 しかしです。そのほんの数十秒の、平地でのライドのみでしたが、本機はとても期待が持てるBIKEであるという印象を一瞬で受けました。ビリビリっと来ましたね。ひとえにVPKを中心としたリア周りが凄いのです。ペダリングでリアサスペンションがまったく無駄に動きません。一昔前では想像が出来なかった、驚異的な機構です。熟成度の高さに驚きます。前後のサスペンションをエア式で揃えている事もあり、BIKE全体も軽量な印象でまとまっていて(44cmで15.0kg)、総じてオールラウンドに使えそうな特質を持っています。フロントギアにチェーンデバイスを装備していますがギア板は2枚構成になっていて、これも使用フィールドを格段に広げてくれます。アジャスタブルシートポストの採用からも、本機の位置付けがイメージ出来ます。エンデューロやオールマウンテン、そんなワードがアタマに浮かんできます。

 数十秒しか乗れなかった事が本当にとても悔やまれますが、近年急速にマーケットが広がっているこのカテゴリーの数あるBIKE群の中で、必ず筆頭に躍り出る、そういう予感を抱かざる得ない1台でした。長期的に拝借してぜひ乗りたい!

フロントサスペンションは、SR Durolux RC2 160 20mm Taper。エア式で160mmのトラベル量を持つ。エンデューロレーシング、トレールランニング、オールマウンテンツアーに対応、とメーカーでは謳う、ややハード系の汎用性を持つフォーク。 変わった外観を持つ20mmアクスルはQLOC axleというSRサンツアーのオリジナルで、スルータイプながらクイック式になっていて、付け外しが簡単に出来る。フォーク内部はDual chamber air travel adjustという機構を持ち、Low & high speed compression & reboundtの調整機能を持つ。 VPKを搭載したリアサスペンションは、ユニットにFOX Float-A P-S CTD BV LVを装備。試乗車はノーマルのインナーチューブになるが、製品版はカシマコート版になるようだ。スイングアーム剛性をサポートするX BRIDGEも採用。(写真の試乗車は、ユニットの取付け向きが誤りです)
ブレーキは前後ともシマノ製油圧式ディスク。M596というモデル名のないグレードになるが、制動力はまったく不満ない。ローター径は、フロントがφ203mm、リアがφ180mm。アクスルは、QLOCシステムで20mmながらクイック式になる。 フロントギアはチェーンデバイスというかテンショナーを装備する事で、チェーントラブルを軽減しながらダブルの仕様になる。シマノのSLXを使い、丁数は38-24。クランク長がフレームサイズで変わる設定(170mm-38/44cm、175mm-48cm)。 リアディレーラーにはシマノ Deore XTのShadow+タイプを採用し、精確な変速とグラウンドヒットなどの無用なトラブルを回避する。ハブも前後ともにDeore XTとなり、軽量化などに寄与する。スプロケットは、11-36Tの10速仕様。