【タイオガ】スパイダーサドルの進化系と言える、感嘆するクッション性を誇るアンダーカバーシリーズ。

日本のマウンテンバイクユーザーにとって馴染み深いブランド、タイオガ( TIOGA )から、気になるサドルを見付けたので紹介します。

掲載日/2019年10月18日  取材・写真・文/やかん
取材協力/マルイ

 

 古くから日本のマウンテンバイクユーザーにとって馴染み深いブランド、タイオガ( TIOGA )。先日開催された販売店向け展示会にて、気になる商品を見付けたのでぜひ紹介したい。


永遠の課題である、サドルとお尻の関係

 自転車のサドルというと、実用車、スポーツサイクルに関わらず、とにかく「お尻が痛くなる」、といった声を頻繁に聞く。筆者も、あれやこれや試し続けているが、厄介なことにコースレイアウトによっても変わってくるし、年齢とともに当たりへの印象は変化しているように思う。これはもはや、「 100 人いれば 100 とおり」という様々なお尻や骨盤のかたちがある訳で、「絶対!」などという商品はこの分野に於いては、永遠に存在し得ない。

 では、どうすればよいか? 解析学的なことはさておいて、ひとまずは「柔らかい」は肝だと思っている。普通に地べたに座ればそれは明白で、土だと痛いし砂利だともっと痛い。だが、芝生の上ならマシで、そこに一枚薄くてもクッションを敷けば、悪くはならない。このことから解るように、人間のお尻はかなりヤワ。そして、万人にウケるのは「柔らかさ = クッション性」。

 

クッション性を犠牲にしてきたスポーツサイクル

 しかし、スポーツサイクルに於いて難しくなるのが、実用車のように柔らかさを抜群に重視すると、ペダリング感やポジション移動などに支障が出ること。一発勝負な局面では、かなり薄かったりクッション性は二の次になることが多い。それでも受け入れ難いのが、悪路での突き上げ。当然、マウンテンバイクでの話しになるが、いくらリアサスペンション機能が抜群に優秀になったとはいえ、小さく常に続く振動は、ロングライドで確実にライダーの身体を蝕む。可能な限り、取り除きたい要素だ。

 タイオガのサドルは、センターにホワイトラインが走ったシンプルなモデルが 2000 年より前に流行ったが、近年は見た目のインパクトさが強烈な“スパイダーサドル”が登場し、数々の類似商品が出るきっかけともなった。ところが、このスパイダー構造は決してクッション性を最優先したモノではなく、パッドが追加できるようにはなっていたが、樹脂むき出しから来る当たりの強さは、やはり「レーシー」であった。
(というよりかは、あのパッドはただのスリップ防止用であったし)

昔、流行ったタイオガのサドル。基本的にロングノーズで、荷重移動がし易かった。
初期型のスパイダーサドル。見た目の印象強く、現在は改良された2ndモデルが発売中。スパイダーホールがむき出しの分、グリップ力は良好だがパンツへの攻撃性はやや高い。

 

“ウェブ メッシュ ベース”が、良好なクッション性を生み出す

 そこにメスを入れるようなかたちになったのが、今回紹介する『アンダーカバーサドル』だ。有り体に言うと、スパイダーサドルにカバーを掛けたような見た目。この部分は『バイオ X パッド』と呼ばれるフォーム材パッドで構成され、実はこれにクッション性を持たせた訳でなく、その下に依然と存在するスパイダー構造の『ウェブ メッシュ ベース』が非常に良くしなるようになっているのだ。

タイオガの最新スポーツサイクル用サドル、アンダーカバーシリーズ。発売済み。

 その具合は、実際に会場で収めた下の動画を見てもらえれば一目瞭然である。取り付け車両はフルサスペンションバイクであったが、それでもサドルのベースはこれだけ動く余地がある。

< 動画リンク >


 このしなり具合は当然クッション性の向上に寄与しており、リアサスペンションでは対処しきれない衝撃を和らげる効果がある。さりとて、もちろん実用車のような野暮ったい作りはしていないので、サドルを軸とした BIKE コントロールを阻害することはない。

基本的に3つの層からなる。下から、アーク フレックス レールマウント、ウェブ メッシュ ベース、バイオ X パッド。イラスト展開図ではパッドの上にさらに合皮カバーが掛かるが、製造工程上は写真のように一枚になる。

 筆者は現在、所有する BIKE の 1 台に旧型のスパイダーサドルを取り付けているが、展示会場で押したり展示車に跨った限り、このアンダーカバーサドルに替えたい気持ちが強くなった。

 蛇足であるのだが、サドルのどこにも水分を吸ってしまう素材がないのもいい。半年ほど前、別の BIKE で、あまりにもパンツへの攻撃性が高いハード使用向けサドルから、ややコンフォート系マウンテンバイクサドルに替えたのだが、それには布地の箇所があり、降雨や泥水を吸ってしまい難儀しているのだ。ささいなことなのようだが、このようなシチュエーションも走るマウンテンバイクでは、注意したいポイントかと思う。

 

アンダーカバーサドルは現在、3 モデル & 複数グレード

 既に発売はしているアンダーカバーサドルは、現在、3 つモデルが存在し、それぞれにレール違いで複数グレードが用意されている。下位 / 上位モデル、という位置付けではなく、基本的にはサドルの形状と使い方で 3 つに分けられ、その中で軽量さや若干のレール特性の差異で値段が分かれている。マウンテンバイクは特にそうだが、「高価 = 高性能」ではないので、そこはゆめゆめ注意してもらいたい。

 簡単に、

・アンダーカバー ブースト ダウンヒルやエンデューロなど下り向け クロモリ中空レール/9,350円(以下、すべて税10%込み)、チタン中空レール/1万4,300円

・アンダーカバー ハーズ 女性向け クロモリ中空レール/9,350円、チタン中空レール/1万4,300円、カーボンレール/2万900円

・アンダーカバー ストレイタム オールラウンダー仕様 クロモリ中空レール/1万4,300円、カーボンレール/2万900円 ※そのうち??

従来のスパイダーサドルとの違いは、フォーム材パッドを取り入れたことでより網目状のサドルベースを柔らかく作れるようになったこと。
モデルによってグレード展開や価格にバラつきあるが、今後は……。

 ちなみに、知らなかったのだがクロスカントリーライダーで金メダリストのジュリアン・アブサロン選手も使用しているらしい。

ジュリアン・アブサロン選手。アテネ/北京五輪の金メダリスト。

 荷重移動や腰掛けてのペダリングで重要な役割を果たすサドル。微々たる進化やパーツかもしれないが、今のライディングへの不満や身体の不調があるならば、ぜひ気にして欲しい商品だ。

会場に展示された装着車はメーカースタッフの私物で、ハードに乗り込んでいる痕が好印象。実際に乗っていないひとの話しはまったく当てにならないので。装着品は、ブーストのクロモリレール。

< 参考 >

 

 

ダート&モト編集部
サトウハルミチ(やかん) Harumichi Sato
東京都生まれ千葉県育ちで、身長 156cm の mini ライダー。紙媒体の編集を長く経験した後、2012 年 4 月から初めて WEB マガジンに携わる。戦車から旅客機まで無類の乗り物好きで、特に土の上を走る四輪・二輪に目がない。競争事も好きで、マウンテンバイク/モトクロスはレース経験あり。モーターサイクル/スポーツサイクル以外にフィルムカメラ、ホームオーディオ、クルマ、紙の読書(恩田 陸先生の大ファン)、ガンプラが大好きで、住まいはモノで溢れている。特技は、引き落としの滞納。スポーツサイクルは、マウンテンバイク 6 台と BMX 1 台を所有。