■スペシャライズド/SPECIALIZED S-Works Stumpjumper FSR CARBON 650b(2016) 102万円 Sサイズ MTB試乗インプレッション
掲載日:2015年10月19日 取材・写真・文/やかん
地球上にこんな極上のマウンテンバイクがあったのかと思わせられる1台
S-Works スタンプジャンパー FSR カーボン 650bは、スペシャライズドの歴史の中でも初期から存在する『スタンプジャンパー』の名を冠する、オールラウンドなマウンテンバイクです。スペシャライズドでは「トレイルバイク」という言葉を使っています。
このBIKEインプレッションは、スペシャライズド・ジャパンがランダムで行っている “ TEST THE BEST NEW MODEL試乗会 ” に参加してのもので、一般ユーザー向けの機会を利用したものです。今回の TEST THE BEST は、特に東関東のマウンテンバイクユーザーには馴染み深い、富士見パノラマ(長野)で開催されました。筆者は今回、テストライドを、すべてこの富士見パノラマのCコースをフルに使用しました。
さて、このS-Works スタンプジャンパー FSR カーボン 650b。まずプライスがとんでもありません。定価で100万円を超えます。ロードバイクではそれなりにあるプライスかもしれませんが、マウンテンバイクではなかなかお目に掛かれません。そのBIKEを試乗車として用意してしまう日本法人の姿勢にも驚きますが、それだけ自信のある1台なのであろうと想像出来ます。
S-Works スタンプジャンパー FSR カーボン 650bは、その名の示す通り、ホイール径がマウンテンバイクの今の主流になる、650b = 27.5インチのBIKE。従来の26インチより少し大きく、旋回性はやや独特ですが走破性は圧倒的な29インチよりは小さい。お互いの良いところを取った、今のトレンドサイズです。そしてフルサスペンションフレームとなり、そのほとんどの部位がカーボン製となります。このカーボンの勢いは、マウンテンバイクの世界でもやはり止まらなく、初期は小物類だけであったものがフレーム、ホイールとほとんどの部分を占めるようになっています。本機も、ホイールまでカーボン製を採用する徹底ぶりです。
サスペンションは、フロントがロックショックス・パイクRCT3 650b、リアがフォックスショックスのフロート ファクトリー。トラベル量はどちらも150mmとなり、この数値から本機がやや下り寄りのBIKEである事が解ります。そのサスペンション、取り上げるべき特記事項がリアショックのカスタム施工。スペシャライズドは以前から特にリアショックに関しては独自の方式やチューニングを取り入れていましたが、本機S-Works スタンプジャンパー FSR カーボン 650bもその例に洩れません。まず、2016年のスペシャライズド車の多くに採用される“セットアップが容易なAUTOSAG機能”。これはエアショックに予めある程度の加圧をしておき(300psi)、それからライダーがBIKEに跨った状態で専用のバルブコアをプッシュ(減圧)するだけで、最適なエア圧(サグ値)になるというものです。たいへん革新的な機能ですし、セッティングの手間が大幅に軽減され、ライダーが受ける恩恵はとても大きいです。
“Rx Trail Tune”というカスタマイズも施され、トレイルの上りでも下りでもよりしなやかで反応の良い動きを提供する、と言います。ギア関係は、やはり今のトレンドである、フロント1枚、リア11枚というもの。丁数は、フロント30T、リア10ー42Tです。その他、フレームとステム部に“SWAT”という工具格納システムを備えます。まず、フレームのダウンチューブに設けられたSWAT Doorを開くと、その中のコンパートメントにチューブ1本、ツール、ポンプを収納出来るようになっています。リアショックの付け根部分には専用のアーレンキーセットを収納。ステムには、チェーンのミッシングリンク用のツールを格納しています。スポーツドリンクで満たしたボトルをボトルケージに装着したら、極端な事を言えば身一つでトレイルへ走り出す事が出来です。それでは、筆者も早速このスペシャルプライスのBIKEでオフロードに繰り出してみます。
富士見パノラマのCコースを下ってきての感想は、「もう最高」。申し訳ないですが、これが印象を表す最良の言葉です。オフロード走行とは思えない、超シルキーで極楽ライドがフルコースで堪能出来ました。軽量さが生み出す機敏性、重心が綺麗にまとめられコントロール性がとても高いフレームパッケージング。同社の技術の粋を集結したFACT 10mカーボンファイバー製のTrailシャーシとStumpjumper FSR M5チェーンステーは、bestな振動吸収性と路面応答性を提供。熟考されたリアサスペンション構造は、ペダリングでリアショックがまったく動かない驚異のテクノロジーに昇華。これほどオフロードを楽しく走れるマウンテンバイクが地球上に存在した事に、驚きです。間違わないように言っておきますが、全体的に乗り心地がソフトでサドルにドッシリ座ってライドが楽しめる、という事ではありません。適切な身体の動きはもちろん必要ですし、路面からの振動などもしっかりと伝わって来ます。ただ、すべての動き、フィードバックが信じられないほどの高次元で、今までに味わった事のない究極のオフロードライドを提供してくれたのです。「まいった、降参」といった感じです。
100万円を超すスポーツサイクル、誰しもが買える物ではありません。筆者でも到底ムリです。しかし、そこにはその価格分の説得力ある性能と楽しがありました。機会があれば、みなさまにも是非1度試乗をお薦めします。乗ってしまったら、ローンを組んででも買いたくなる人は少なくないと思います。サスペンションは予めチューニングされていますし、後から買い換える部品はひとつもありません。パッケージの完成度が高く、カーボン製フレームの性能も唸る以外ありません。ハードにマウンテンバイクライドを楽しみ、シーズンを通して乗り倒すぐらい使い込む人であれば、もったいなくはない投資と思えます。とにかく1度乗ってみて下さい。マウンテンバイクの最高峰がその先に見えると思います。そして、気が付いたら契約書にサインをしている筈です。『S-Works』の名に偽りなしでした。
※価格は税込み。掲載時点でのものです。
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